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レッスンでまちがえてパッと止まってしまい、それが度重なると、止まるくせがどうしてもついてしまう。
となると本番で弾くときに、いくらふだんうまくいっていても、緊張感もあるし、何か起こるかわからない。
まちがえてやめてしまったら、そこで音楽も途切れてしまう。
音楽というのはもちろん楽譜に書いたその曲を演奏することはいちばん大事ですが、それよりも自分がどう感じてどういうふうに表現するか、まちがえてもまちがえたなりに即興でも何でもいいから続けないといけないということです。
U)よく言われたのは、飛行機でもエンジンとめたら落ちちゃうって(笑)。
目的地に行くまではちゃんとやらなければということはありますね。
C)緊急の場合にどのように対応するか、それを考える力をすごく大切に考えていました。
U)もうひとつは、他人の演奏を聴いていても、下手だというのは簡単だけれども、そうじゃなくて、どこをどう直したらよくなるかを考えなければだめだということをよく言われましたね。
C)私も教えるようになってから言われたのですが、音程か悪いとかいうのは、誰でも言える。
下手だとか、違うというのは言えるけれども、それが何で違うのか、違うことをどのようにすれば改善されるかまで言わないとだめだと。
それを毎回言うのではなくて、いまそれを言うべきかどうか。
違っていても、いまは黙って本人がいつ気づくかを待たなければいけないときもあるし、これは自分で気づくのを待つよりもこの場で言っておかないと悪い方向にいってしまうとなれば、いま言わなければいけない。
その時期を見極める力が指導者には要求されると言っていましたね。
まちかえで止まってしまう、それですぐに「もう一回弾いてごらん」という場合もあります。
またまちがえてしまう。
そうすると、緊張したからたまたまそこでまちがえたのか、何かそこに原因があるからまちがえたのか、教える側としてそれを考えなければいけない。
Uさんの場合、まちがえてやめたときに最後まで弾くようにと言われたのは、最後まで弾き通す力をいまつけたほうがいいと考えたからではないかと思います。
止めたときにすぐ注意をしても、そこに注意が届かない場合もあるから、もう一度やってごらんという。
また止まる。
生徒はそこで、「先生、何か言って」と期待しているのですが、そこであえて言わない。
それで、生徒はどうしよう、でも先生は何も言わない、でもこの曲最後まで弾かなければいけない、そういったことを考える時間を与えるということです。
もうひとつは失敗を恐れるなということ。
まちがってもいいから弾いてごらん。
一回まちがってごらん、とか、いまから弾く曲に五回まちがうように弾いてごらん、と言ったら、だれもまちがわないのです。
U)なるほどね。
われわれもそうですが、まちがうことを恐れて、どうしようと思いなから弾いていたら、いい音楽はできない。
よく父は、日本人は学校英語の知識はものすごくあるし、単語力もすごいのに、外国人とコミュニケーションをとる会話となるとできないのはおかしいという話をしていました。
日杢語でもそうなのでしょうが、コミュニケーションのところで会話が成り立たないというのがひとつあるのではないか。
会話というのは自分を表現することであって。
そういうことがないからできないのだろう。
それは音楽表現も一緒だと言っていました。
合宿などでみていても、小さい子からみたら、大人にとってもそうですが、H先生は怖い存在です。
馴れ馴れしい子だとちょっと違うのですが、向こうのほうから「H先生」と話しかけるようになって会話がそこで成り立つようになってきたら、その子も自然と弾けるようになるというのです。
U)僕たち日本人は、自分の感情を表現することは、たとえ日本語であっても下手くそだと思います。
イギリスに行っていたときに、友人の子どもがピアノを弾いているのを聴いていたら、テクニックは同じ年の子の日本人のほうがはるかにうまいと思うのですが、すごく自分の感情か出てくる。
この曲、自分はこう表現したいという気持ちか、ほんとうに小さいころから出ている。
それをみて日本での弦楽器の教育は大変じゃないかなと思いますね。
C)先ほども少しお話ししましたが、技術的には日本はトップレベルだと言われています。
いろいろ詰め込まれて、いろいろ教え込まれて。
でも音楽表現となったときに、自分を表現することが苦手で、結局は音楽の表現もできない。
表現というよりも、その人その人の音楽の独自のスタイルが足りないような気もします。
外国へ行って、私でも「こうしたら」と言いたいような持ち方なのに、出てくる音がすばらしかったりということがあるんです。
父も言っていましたけど、技術を最初にたたき込んでしまったら。
そういう形にしなければいけないと思って、そこで硬さが出てしまう。
いい音というのは、力を抜いたり、持ち方とか、いろいろ要素がそろい、その上で自分がどういう音を出したいかという感情がわかないとできませんし、表現もできないと思います。
父は「今は技術をたたきこむ時期だ」とか言って、最初は自由に曲や合奏ばかり弾かせて、時期を見計らって練習曲などを取り入れたりした場合もありましたね。
まず、自分の音を聴く、まわりの音を聴くといった「聴く耳」を作ることを大事にしていました。
『聴く耳』というのも、「耳で見て目で聴く」という言い方をしていました。
携帯電話とか、ヘッドホンステレオなんかが若い人たちに浸透していますね。
ヘッドホンステレオなどは一人の世界でずうっと聴いていますから、全体の雰囲気のなかで聴いていない、とにかく自分がよければというふうになってしまいますから。
何か聴かなければというときには、ちゃんとしたもので聴かないと、まわりとの関係が断たれてしまってよくない、とも言っていました。
U)もうひとつお聞きしたいことがあるのです。
ずいぶん昔に聞いた話ですが、ある日本人の音楽家が、モーツァルトを弾きたかった。
しかも、ウィーンの人がほんとうのモーツァルトと言ってくれるようなものを弾きたいというので、ウィーンに行って二年間ぐらいウィーンの人たちがやっているような生活をして、絶対自分はウィーンの人間になりきったと思って演奏会をして、すごく好評だったんだそうです。
だけど、好評だった理由は、自分たちにない、いかにも日本人的なモーツァルトで面白かったと言われたというのです。
もうひとつ経験があるのは、これはイギリスに行っていたときですが、ウィーン出身の方の家でベートーヴェンの第四ピアノコンチェルトのレコードを聴いていたら、二楽章のときだったと思いますが、突然彼が「ほら、この音がウィーンの音だ、ウィーンフィルの音だ」と言うのです。
この音は絶対にドイツのオーケストラは出せないという言い方をされて、ああっと思ったことがありました。
日本人がヨーロッパの音楽をやるときに、彼らと違うことを考えているようなことはあるのですか。
さらに例を挙げますと、グレンーグールドがソロイストになってブラームスの第一ピアノコンチェルトを弾いた演奏会で、指揮者のバーンスタインが出てきて最初に演説するんです。
自分とグールドはこの音楽の解釈についてはぜんぜん意見が合わないのだけれども、非常にユニークな解釈なので指揮をしますと言って演奏した。

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